2010年12月17日金曜日

Donna Donna


今日、旧ARISAがMLFから搬出されました。
一部は北大に引き取ってもらうことになっているのですが、試料と検出器のステージ部分が(大きすぎて)引き取り手がなく、かといって置き場所もないので泣く泣く廃材にする予定でした。
が、捨てる神あれば拾う神あり。
つくばに持って行く寸前にお声がかかり、引き取ってもらうことになりました。
引き取るといってもそのまま使うわけではなく、ボールねじやガイド、モーターなどの部品を再利用するという形なのですが、それでもちゃんと有効利用してもらえるだけありがたいです。
「まだ使えるのになぁ、買ったら高いのになぁ」と心を痛めていたのですが、これで胸のつかえがとれました。

2010年12月8日水曜日

新反射率計搬入


一昨日ARISAの撤去が終わりましたが、今日は早速新しい反射率計の搬入を行いました。
私は研究会のため立ち会えなかったのですが、夕方戻ってくると搬入がちょうど終わったところでした。
細かな設置位置の調整等は明日以降ですが、とりあえず無事搬入できてほっとしています。
しかし、工場見学等で現物を確認した際に「大きいなぁ」と思っていたのですが、実際に所定の場所に入れるとやっぱり大きいですね。
いろいろな物がギリギリのサイズです。

2010年12月6日月曜日

ARISA-II 最後の日



これまでがんばってくれたARISA-IIがいよいよ退役になりました。
終わりというのはあっけないもので、遮蔽体外への搬出は1日で終了です。
これから、J-PARC外への搬出手続き等を行いますが、今日が事実上のARISA-II最後の日だと言っていいでしょう。
ちょうど2年前にKEKからJ-PARCに移り、ビームを受け始めたのがずいぶんと昔のように感じます。
いろいろな物が足りない中で一生懸命やってきましたが、ARISA-IIはちゃんとそれに応えてくれました。
これまでがんばってくれて本当にありがとう、と言ってあげたいです。

ちなみに、ARISA-IIの一部は北大に移されます。
向こうでもまだまだがんばってほしいですね。

2010年12月4日土曜日

ARISA更新に向けて


中性子源(モデレーター)の不調により、12月2日にビームが停止してしまいました。
BL16では、3日までユーザー実験を行い、その後ARISAの更新を行う予定としていたため、そのまま工事へと移行しています。
今日は午前中から遮蔽体天井の解体を行い、装置の取り出し、設置ができるようにしました。
来週中に装置の入れ替えを完了し、再び遮蔽体を復旧させる予定です。

2010年11月16日火曜日

BL16中性子反射率計研究会


予定通り、11/15にBL16中性子反射率計研究会を行いました。
発表件数は10件で、反射率計の装置についてとそれを用いた研究成果について議論が交わされました。
また、会場には30名以上の方にご参集いただきました。
S型課題の審査を兼ねるということで、審査員の方にも貴重なご意見をいただき、有意義な研究会だったと思います。

お忙しい中、本当にありがとうございました。

2010年11月9日火曜日

run#36開始


途中キャンセルされたrun#35でしたが、無事run#36が開始しました。
というわけで、装置の仕上がり具合を確かめるために九州大学田中教授のグループに提供していただいた重水素化ポリスチレンの薄膜測定を行いました。
これもSi基板と同様、high-Q領域で長波長成分によるバックグラウンドが邪魔をしていたのですが、今回の装置整備によってQで約4.3nm^-1、反射率で10^-7まで測定する事に成功しました。
異なる角度でのフリンジの重なりも良好です。
今、小さな基板(15mm x 15mm)での反射率測定を行っていますが、時間さえかければ質の高いデータが測定できている模様です。

ちなみに、キャンセルされたビームタイムを少しでも補うために、11月と12月のビームタイムの間にあった1週間のメンテナンス期間をとりやめ、まとめてrun#36ということになりました。
BL16では最初に残っていた機器調整等を行った後にユーザーの実験を行い、12/3から(マシンタイム中ですが)装置本体の更新作業を行う予定です。

2010年10月27日水曜日

バックグラウンド対策(2)


バックグラウンド対策の続きです。

前回の最後の写真はミラーのホルダーで、上の段に偏極ミラー、下の段に0.3mmのシリコンに約80nmのNi薄膜を乗せたミラーが据え付けられています(Niミラー/偏極ミラーは京大原子炉の日野准教授に作成していただきました)。
偏極ミラーはそこから反射してきた中性子を使うことで偏極解析を行う、いわゆるアナライザですが、Niミラーは中性子を透過させることによって長波長の中性子を落とすフィルターになります。
上の図はミラー位置の調整中に測定した、透過中性子のTOFプロファイルです。
エネルギーの低い(波長の長い)中性子ほどミラー内部へ進入しにくいのですが、ある波長を超えると中性子が完全に反射されてしまう(全反射)ため、図中矢印の箇所で急激にカウント数が減っています。
しかし、この状態だと使いたい波長の中性子まで切ってしまっているので、もっとビームを深い角度で入射させて中性子が透過しやすくなるようにしてあげます。
今回はだいたい2nmよりも長い波長の中性子が全反射するようにミラーの角度を調整しました。
2.1nmよりも短い波長の中性子はディスクチョッパーで切ることができるので、これで実際に使いたい波長の中性子のみを取り出すことができるわけです。


今回の対策により、実際どれくらいバックグラウンドが下がったか測定するために、Si基板からの反射率を測定しました。
実は、以前Si基板からの反射を測定した際は長波長中性子のバックグラウンドでうまく反射率が測定できなかったのですが、今回はきれいな反射率プロファイルを得ることができました。
これは「バックグラウンド処理をしていない」純粋な入射中性子と反射中性子の強度比から計算した反射率プロファイルなのですが、バックグラウンドレベルは10^-7に迫ろうとしています。
心の中ではバックグラウンドが10^-7を切ってくれるのではないかと期待していたのですが、例えばSNSの中性子反射率計の測定限界が10^-7となっているので十分に合格点と言って良いでしょう(十分に統計をためればバックグラウンドを差し引いて10^-7より低い反射率も測定可能だと思われます)。
ただ、完全にフラットな基板からの反射だとQ^-4に比例して減衰していくのですが、弱くて大きな干渉が見えているのがちょっと気になります。
細かく角度を振ってプロファイルは重なっているので基板そのものの構造が出ている(汚れてた?)のだと思っているのですが、その辺はもう少し検証が必要かもしれません。

しかし、装置調整もうまくいったし、いよいよ試料を測定しようと思ったその矢先!…残念なことに中性子源にトラブルが起きてビームが停止してしまいました。
今のところ次のrun#36(11/7-)には実験再開の予定です。

2010年10月21日木曜日

BL16中性子反射率計研究会

日時:2010年11月15日 13:30~18:00
場所:高エネルギー加速器研究機構4号館2階輪講室1(茨城県つくば市大穂1-1)
参加費:無料
プログラム:
13:00 - 13:10 はじめに(KEK 瀬戸秀紀)
13:10 - 13:30 試料水平型中性子反射率計ARISA-IIのアップグレード(KEK 山田悟史)
13:30 - 13:50 高分子薄膜のガラス転移と脱濡れ(京大 金谷利治)
13:50 - 14:10 非溶媒界面における高分子の凝集状態(九大 田中敬二)
14:10 - 14:30 環状高分子/線状高分子積層膜界面の相互拡散挙動に及ぼす環状高分子の分子量の影響(名大 川口大輔)
14:30 - 14:50 ナフィオン超薄膜の構造解析(豊田中研 原田雅史)
14:50 - 15:10 コーヒーブレイク
15:10 - 15:30 中性子/X線反射率法を用いたDLC 膜及び重水素化DLC膜の水素・重水素の定量について(茨大 尾関和秀)
15:30 - 15:50 In situ中性子反射率法によるリチウム電池電極界面構造の解析(東工大 菅野了次)
15:50 - 16:10 新反射率計の設置に向けて~現在の進捗状況と今後の見通し~(九大/JST 御田村紘志)
16:10 - 16:30 ERATOソフト界面プロジェクトにおける中性子反射率測定の今後の展開(九大/JST 高原淳)
16:30 - 17:30 自由討論

 J-PARC/MLFのBL16に設置された中性子反射率計ARISA-IIは、昨年度末より本格的な中性子反射率測定が可能となりました。その後は順調に成果を重ね、ARISA-IIのデータによるscientific paperも受理されてました。また、装置のアップグレードも順調で、この夏にはさらなる反射率の測定限界(R<10^-7)を目指して機器の増設を行っております。
 BL16中性子反射率計研究会では、これまでARISA-IIの装置の詳細や、ARISA-IIで行われた実験結果について情報交換を行うと共に、将来の展望についても議論を行う予定です。本研究会はKEK中性子共同利用S型課題の予備審査会を兼ねるものですが、研究会としてはオープンなもので、多くの方に中性子反射率計を用いた研究を知っていただくことを目的としています。大学院生を含めて旅費支給が可能ですので、興味をお持ちの方は下記のURLを参考にご登録をお願いします。
http://www.kek.jp/imss/topics/images/KEK-S08_program.pdf

皆さまのご参加をお待ちしております。

高エネルギー加速器研究機構 瀬戸秀紀
九州大学大学院工学研究科 高原淳

バックグラウンド対策(1)


今回、バックグラウンド対策としてT0チョッパーを設置し、高速中性子の除去を試みました。
中性子反射率計は主に長い波長の中性子を使うため、ただ設置するだけでは大きなメリットはないのですが、使用する波長を定義するディスクチョッパーを半分の回転数で動作させることにより、使える波長範囲を倍にすることができます。
これは、時分割測定のように広いQ領域の同時測定が求められる場合に有効な手段です。

ということで、T0チョッパーの設置に合わせてディスクチョッパーを25Hz→12.5Hzで動くように改造しました。
早速12.5Hzで動かして入射中性子の波長分布をみたのですが、第2フレームの頭に変なピークが観測されてしまいました。
40msぐらいのものすごく鋭いピークはT0チョッパーでも止められなかった高速中性子のピークです。
これはほんのせまい領域の中性子が使えなくなるだけなのでまだ良いのですが、そこから少し遅れたところにもう1つピークが現れています。
原因を調査してみたところ、これは高速中性子ほどではないけれど、それなりにエネルギー(すなわち透過力)が高い熱外中性子であることが分かりました。
これはディスクチョッパーで止めるべきものなのですが、元々は高いエネルギーの中性子を相手にする予定ではなかったため、遮蔽がたりなかったようです。
現在はディスクチョッパーの遮蔽材としてガドリニウムを薄く塗布したものを使用しているので、これを変更して熱外中性子を止められるよう検討しています。


そしてもう1つ、バックグラウンド対策を用意しています。
今日調整が終わり、現在その効果を検証中です。

2010年10月16日土曜日

run#35開始


夏の工事が終わり、run#35がはじまりました。
BL16では、色々と機器を設置したのでその調整を主に行う予定です。

実は、runの直前に遮蔽体をあけなくてはならない重大な故障が見つかって冷や汗をかきました。
(遮蔽体復旧のタイムリミット1時間前に無事復旧)
今日は今日で今まで動いていた装置がトラブルに次ぐトラブル発生。
やっつけてもやっつけても新しい敵が現れ続け、結局今日は未解決の問題をいくつか抱えたまま撤収しました。
余裕を見て調整期間をとってあるので何とかなるとは思うのですが、こうもトラブルが続くと胃が痛いです。

2010年10月4日月曜日

続・T0チョッパー


うまく動作していなかったT0チョッパーですが、今日ようやく期待の動作をしてくれました。
ちゃんと25Hzで回転し、希望の回転位相をちゃんと保ってくれています。
実は、写真は別の装置の制御盤をお借りして動作テストをしたものなのですが、その後BL16用の制御盤でもちゃんと動作することを確認しました。

明日以降はさらに調整を詰めていく予定です。

2010年9月28日火曜日

T0チョッパー


ついにT0チョッパーの設置が完了しました。
こちらの不手際で色々と細かな問題は生じたのですが、何とか無事に据え付けられました。
あとは回転試験なのですが、目標の25Hzまで回転させられるものの基準信号に同期させようとすると24.95Hzで回転してしまうという謎の現象が起きています。
現在、原因を究明中です。

2010年9月17日金曜日

偏極ミラー設置など


今週はT0チョッパーの設置作業の合間を縫って偏極ミラーの設置を行いました。
このミラーはKURの日野准教授に作成していただいたもので、96%以上の偏極率で中性子のスピンを選別することができます。
通常、反射率計で偏極ビームというと磁性薄膜などに用いられますが、BL16では中性子スピンエコー法によるダイナミクス測定に利用することを検討しており、数ps~数ns程度の運動が捉えられるようになる予定です。


また、運転周波数の切り替えも行えるような回路の組み込みを行いました。
J-PARCでは25Hzでパルスビームが発生しますが、これを半分の12.5Hzで取り出すことができるようになります。
パルスビームの間隔が長くなると使える波長バンドが広くなるため、1度に広いQ空間が測定できます。
時分割測定のように、角度スキャンなしで広いQ空間の測定を行いたい場合に有効な測定モードです。

来週はいよいよT0チョッパーの据え付けと運転試験を行う予定です。

2010年9月13日月曜日

遮蔽体復旧


ちょっと間が空きましたが、引き続き工事を続けています。
今日は装置側の遮蔽体復旧工事を終えました。
本来は新しい装置本体への入れ替えが終わるまでは天井をあけたままにするつもりだったのですが、色々あって工場でちゃんと動作確認をすませてからこちらへ移設してくることになり、さっさと天井を閉じてしまうことにしました。
というわけで、少なくとも11月いっぱいまではARISA-IIのままで実験することになります。

ただし、色々と改造は加えていて、今日はT0チョッパーの設置作業も同時進行で行っていました。
作業の開始日ということで採寸と罫書きを行っていたのですが、こちらで把握していた寸法に間違いがたくさん見つかり冷や汗がでました。
ただ、何とかリカバリーできそうな感じで、今のところ作業は順調に進んでいます。
他にも細々と手を入れているのですが、それは別の機会にご報告します。

2010年8月23日月曜日

ビームダンプ設置


8/21(土)に残りの遮蔽体側面の補強とビームダンプの補強を行いました。
ゲットロストチューブという真空槽をダンプの内部に挿入し、ダンプ内部と前面にB4Cの粉を接着剤で固めたレジンを追加設置しました(写真は前面のB4Cレジン設置前)。
これでほぼ遮蔽体補強の工事は完了で、あとは細かな補修等を行います。

2010年8月18日水曜日

遮蔽体補強開始


遮蔽体補強工事を開始しました。
まずは遮蔽体側面の補強です。
これは、ホウ酸レジンというホウ酸・ポリエチレンビーズ・接着剤の混ぜ物を鉄の容器に入れた遮蔽材で、中性子を減速させながら吸収する、という性質をもっています。
これを使うと、透過力の高い早い中性子を効率よく遮蔽することができます。
今までの遮蔽体の内側にこれを貼り、試料で散乱された中性子が外に漏れないように補強していきます。

今日も実験ホールは暑かったです。
みなさん、お疲れ様でした。

2010年8月17日火曜日

工事開始


ビーム停止後、少しずつ進めていた工事案件ですが、お盆を開けて本格的にスタートしました。
上の写真は、現在のBL16の様子で、遮蔽体の天井をほぼ全て撤去してしまっています。
隣にある緑の遮蔽体はBL15に設置される小角散乱装置(大観)のものです。
これからビームが出始める10月まで、以下の工事を行います。
- 遮蔽体補強(今のままだと250kWのビームまでしか遮蔽がもたないので、1MWまで受けられるよう補強)
- T0チョッパー設置(高速中性子によるバックグラウンドを低減させるため、100kg以上の金属でできたローターを回転させて高速中性子のみを止める)
- 反射率計本体の置換(今までだましだまし使っていた旧ARISAのスリット、試料ステージ等を交換し、BL16の装置設計に適した装置に変更する)
また、通常25Hzで発生する中性子を12.5Hzに減らし、広い波長領域が使えるようにするオプションも整備中です。


ちなみに、中は今こんな感じです。

2010年7月2日金曜日

run#34まとめ

間が空きましたが、run#34が6/26に終了しましたので、簡単に実験のまとめをいたします。

6/7-9: KEK 瀬戸Gr.
液体/液体界面測定。ただし、セルの問題かうまくいかないので気体/液体界面の測定に方針転換。放管の協力を得て、今までRI管理の観点からできなかった気体/液体界面の測定に初めて成功した。

6/9-11: 東大 横山Gr.
液体/気体界面測定。溶媒による高分子表面の構造変化を観察する実験。ヘビーユーザーということもあり、慣れた手つきで実験をこなしていた。

6/12-13: 名古屋大 川口Gr.
温度変化実験。熱をかけて高分子を溶かし、拡散する様子を観察する実験。1回の測定時間は短い(数分程度)が、拡散に時間がかかるので、実験としては比較的のんびりしていた。

6/13-14: KEK 山田
検出器のテスト。KEKの佐藤さんが周到に準備していたおかげで、非常にスムーズに実験が進んだ。結果もまあまあだと思ったが、佐藤さんはやや不満そうにしていた。

6/14-18: POSTEC Ree Gr.
液体/気体界面測定。高分子へのタンパク吸着についての実験を行った。韓国からのユーザーだが、一人日本語がぺらぺらの人が居て、ちょっと変な感じ。一応、みんなで居るときは英語でしゃべるが、電話がかかってくると日本語だった。

6/19-23: 京大 金谷Gr.
温度変化実験。温度を変化させて膨張係数を調べ、相転移点を探す実験。1回の測定が10分程度で、温度変化は手動。徹夜でひたすら測定していたが、非常にしんどそうで、見ていて切ない気分に。温度変化ぐらい自動でできるようにしようと思った。

6/23-26: 東工大 菅野Gr.
液体/気体界面測定。電池材料の表面構造を電位を変化させながら観察する実験。試料サイズが小さくて不安だったが、3時間程度の測定時間で何とか大丈夫だった。プロファイルも変化が見えているようで一安心。


これから、10月までは加速機の夏期シャットダウンです。
その間に、遮蔽体の補強工事、T0チョッパーの設置、装置本体の入れ替え作業を行います。
そのため、次にビームが出てからはちょっと長めに調整作業が必要になる可能性が高いです。
何とか11月には実験できればと思っています。
うまくいってくれると良いのですが…

2010年6月7日月曜日

データ変換プログラム


今日からrun#34が始まります。

その直前に、データの変換プログラムがようやく見せられるような形になりました。
今のところ、鏡面反射の反射率までの変換をサポートしています。
反射率の計算方法も前と少しだけ変え、ビーム発散によるQ分解能の低下を抑えるようにしました。
そして、これが一番重要な(?)ポイントなのですが、ほとんどボタンを押していくだけでデータの変換が可能となりました。
今までは、文字をたくさん入力したり、フィッティングをやらなきゃいけなかったり結構面倒くさかったのですが、今回のバージョンアップで変換が圧倒的に楽になりました(多分)。
あとは、ユーザーの皆さまの意見を聞いて、改善に努めていきたいと思います。

2010年6月1日火曜日

run#33 その4

週末は茨城大の尾関Gr.の実験を行いました。
1日だけ、同僚の結婚式のため山田は不在だったのですが、装置は特にトラブルもなく、実験も無事終了しました。
これで、2009年下半期の採択実験が全て完了です。

その後、次のrunで行う液体界面測定のためにミラーの調整を行いました。
初めての試みですが、果たしてうまくいくでしょうか。

以上で、run#33は終了しました。
来月のrun#34も実験が目白押しです。

2010年5月25日火曜日

祝、論文受理!

九州大学の田中敬二教授のグループから論文受理の通知が届きました。

A. Horinouchi, Y. Fujii, N. L. Yamada, K. Tanaka, "Surface reorganization of thin poly(methyl methacrylate) films induced by water", Chem. Lett., accepted.

ついに、ARISA-IIでの最初の論文です!
関係者の皆さま、本当にありがとうございました。
引き続き装置や試料環境の整備を続け、使いやすく生産性の高い装置に仕上げていきたいと思いますので、今後ともARISA-IIをよろしくお願いいたします。

2010年5月22日土曜日

run#33 その3

昨日から名古屋大の川口Gr.の実験が始まりました。
時分割測定なので、試料をセットして5,6時間待つ、という感じの実験です。
測定中に加速機が落ちるとその時間のデータがごっそりと無くなるため割と悲惨なのですが、昔ロスアラモスで同様の実験した際は加速機が数時間オーダーでちょくちょく落ちてしまい、はらはらしながら実験していました。
ありがたいことに、ビームは非常に安定して供給されており、「安心してみていられる」とコメントいただきました。
私としても、今週末は比較的ゆっくりとできそうです。

月曜の昼までこの実験が続き、その後は九大の田中Gr.の実験となります。

2010年5月18日火曜日

run#33 その2

豊田中研原田Gr.の実験が終わった後、三重大の鳥飼Gr.の実験、日曜日からは九大の高原Gr.の実験と続いてます。
ビームは基本的にかなり安定しているのですが、今日の夜から久しぶりに加速器が数時間オーダーで停止しています。
加速器の調子がよいのはいいことなのですが、数週間ほぼぶっ続けのマシンタイムは正直真綿で首を絞められるような感じで、疲労が徐々に徐々に蓄積しているのが実感できます。
まぁ、ビームが出ないよりはるかに幸せですので、ありがたくビームを使わせていただきたいとおもいます。

2010年5月12日水曜日

run#33開始

5/9よりrun#33が始まりました。

初日は東大の横山准教授の協力で初めての斜入射小角散乱(GI-SANS)実験を行ったのですが、なかなか難しい実験で、もう少し実験条件等を考え直す必要があるような感じでした。
翌日からは豊田中研の原田Gr.によるARISA-IIで初めての一般課題が入っています。
実験は順調で、当初の予定通りの測定が行えている模様です。
この後も、ユーザーを入れ替えながら6/1まで反射率測定が続きます。

いよいよ装置が本格稼働を始めた、という感じです。

2010年4月30日金曜日

5月の予定

今日、5月の運転計画に関するミーティングがありました。
当初の予定通り、5/9から6/1まで120kWでの運転を行うとのことでした。
一時はどうなることかと思いましたが、無事復旧を果たしたようです。
ただし、今のところ応急処置のため、夏には故障箇所を完全に入れ替えるそうです。

ARISA-IIでは、ユーザーの実験を行う予定です。

2010年4月17日土曜日

運転スケジュール変更

昨日の夕方からモデレーターの水素漏れが発生し、ビーム運転が停止しました。
水素の温度制御プログラムの不具合によるものらしいです。
今のところ、プログラムの修正、水素の再冷却を行った後、20日(火)から再度運転が行われる予定とのことです。

ユーザーの方を呼んでいたのですが、ビームが出ないということで次回に備えて見学だけしていただきました。

2010年4月14日水曜日

サンプルチェンジャー設置


準備していたサンプルチェンジャーを配線、設置し、動作確認を行いました。
テスト通り問題ありません。
自動測定のプログラムも作ってありますし、これで複数試料による長時間測定が可能になるはずです。

(追記)
動作が微妙に不安定なことに気づきました。
技官の下ヶ橋さんに見てもらい、原因はつかめました。
近日中に対策を施してもらう予定です。
→直りました。

初日のテスト運転終了


初日のテスト運転が終わりました。
約1時間ずつ、2回ビームが出ています。
2日目からもこんな感じで、断続運転が続く予定です。

2010年4月13日火曜日

続・ビーム出ました!


モデレーター負荷試験の25Hz運転になってさらにビームが強くなりました。
現在20kW弱です。

今日はこのまま帰ります。

ビーム出ました!


1Hzでの加速器調整時のビームですが、ちゃんと出てきてることを確認しました。
順調そうです。

もうすぐビーム再開



重故障かと思われたJ-PARCの中性子源でしたが、今日の21:00から復旧することになりました。
BL16は制御系の一部をキャビンに移し、ビームが出るのを待っている状態です。
久しぶりに制御PCを起動したときは、すねていたのか「ユーザープロファイルが読み込めません」とかいうエラーが起きてしまったのですが、なんとか復旧しました。
その後も若干不機嫌だったのですが、色々となだめていたらなんとか機嫌を直してくれました。

冗談はさておき、待ちに待った復旧です。
日曜日の昼までは調整運転で、その後は5日間の本格的な連続運転に移行する予定です。
予備実験によると、故障前の120kWまでは問題ないと見込まれています。

2010年3月3日水曜日

解析ソフト開発(非鏡面反射)


前回変換したデータをいよいよ反射率に焼き直していきます。

測定で得られた中性子強度を反射率に変換するには、ダイレクトビームとの比ととってあげればOKです。
ただし、飛行時間法を用いた場合は波長によって中性子強度が違いますので、あらかじめダイレクトビーム強度の波長依存性を測定しておき、測定データをこれで割ってあげます。
また、検出器の位置によって反射角が異なりますので、波長だけでなく検出位置も考慮しながらQへと変換していきます。

図が、前回のデータを反射率に変換してQに対する依存性へとプロットし直したものです。
横軸Qzは基板に対して垂直方向の運動量遷移を、縦軸Qxは基板に対して平行方向の運動量遷移を表しています。
この試料はリン脂質の2分子膜が約60Å周期で積層していますので、Qz=0.1Å^-1付近のピークはこの積層周期に対応するBraggピークです(0.2Å^-1付近には2次ピークが見えます)。
中央のオレンジ色のラインは分解能から計算される鏡面反射の領域を表しており、これより内側のデータは鏡面反射の成分だと判別できます。
一方、Braggピークの上下にはこの鏡面反射領域を大きくはみ出した反射成分が観測されており、これは明らかな非鏡面反射であると判断することができます。
縦軸の単位に注目するとÅ^-1ではなくμm^-1となっていることからわかるように、この非鏡面反射は非常に大きな構造を反映しています。

このように、2次元検出器の導入により基板に対して平行方向の面内構造を観測することが可能になりました。
もちろん、鏡面反射の領域を解析すれば今まで通りの積層方向に対する構造観測も可能です。
さらに、横方向にビームを絞ればμmスケールの構造だけでなくnmスケールの構造も観測できるようになります(いわゆる斜入射小角散乱GI-SAS法)。
今の時点でも原理的にGI-SASを行うことはできますが、ビームを絞ることによる中性子強度のロスが大きいため、残念ながらまだトライできていません(J-PARCの中性子源が動いていれば2月に行う予定でした)。
これを回避するために集光ミラーを用いた光学系の開発を行っており、かなり良いところまで来ているのですが、実際の設置はもう少し先になるかと思います。

とにかく、これまで不十分だった解析環境が徐々に整いつつあります。
あとはユーザーインターフェイスをもう少し考えようかといった状態ですが、実はこれが一番大変だったりします。

2010年3月2日火曜日

解析ソフト開発(データ変換)


引き続き、解析ソフトの開発中です。

前回は検出器に入ってくる画像の歪みを補正して正確な検出位置を求めることに成功しましたが、ARISA-IIのように飛行時間法(Time-of-Flight法)を用いて中性子の波長を分別する装置では、さらに中性子が発生してから検出器に入るまでの時間を測定する必要があります(中性子の波長は速度に依存するため、飛行時間から波長を逆算する)。
この飛行時間を測定するための回路は既に検出器システムに組み込んでありますので、あとは位置と飛行時間のデータを読み込んであげて運動量遷移Qに変換し、それに対する反射率の依存性計算すればOKです。

というわけで、まずは位置と飛行時間に対する中性子強度のマッピングができるようにしました。
図はリン脂質(細胞膜の主成分)をシリコン基板に積層した試料からの反射を測定したデータで、横軸が飛行時間(波長に比例)、縦軸が垂直方向(Y軸と定義)の位置に対応していて、中央のスポットがリン脂質の積層周期に対応するBraggピークです。
元々のビームは右上の挿入図のように水平方向(X軸と定義)に広がったビームですが、Y軸での位置が散乱角θに対応していますので、ここではY軸のみに着目します。
Y軸での位置によってピークとなる飛行時間が変化していますが、これはBraggの条件を満たす波長λがθに依存していることに起因しています(λ=2dsinθ: λは飛行時間に依存、θはYに依存、dは膜の積層周期なので定数)。

なお、試料が完全な鏡面であれば、中性子は狭いスポット(グラフで言うと赤色の領域に相当)のみに反射されるはずなのですが、この試料は基板に積層したリン脂質膜に熱揺らぎが生じているため反射ビームが広がっています(いわゆる非鏡面反射)。
逆に言うと、このビームの広がりは試料の面内構造を反映していますので、これを解析することによって、膜の熱揺らぎ等を定量的に解析することができます。

次のステップでは、反射率のQ依存性へと変換していきます。

2010年2月25日木曜日

解析ソフト開発(歪み補正)



今、解析ソフトの開発に取り組んでいます。

データファイルを読み出すコードをCで書いていたのですが、2次元データを読み込むところで検出器の個性である「画像歪み」が気になったのでそちらから片付けることにしました。

上の図はその画像歪みの補正過程で、元のデータ(左)は端の方で歪みが出ている上に、等間隔であるはずのスポットに粗密が現れています(直線性の悪化)。
このスポットサイズは実空間でどれだけの間隔であるかが分かっているので、そのデータを元に検出器座標(x,y)における実空間座標(X,Y)の等高線を最小自乗法で求めてやります(中央)。
すると各ピクセルが実空間でどの位置に対応しているかを計算することができるので、これを元にデータの焼き直しを行います(右)。
結果はごらんの通りで、もともと歪みが少なかった中心部分だけでなく、おおきく歪んでしまっていた端の部分までスポットが等間隔になるよう補正されています。
生データで見えている分解能の悪化によるスポットのにじみはどうしようもありませんが、少なくとも位置情報に関する信頼性は大幅に向上したと言えるでしょう。

なお、中心ほどスポットが強く見えるのは検出効率のムラに起因しています。
これについては、非干渉性散乱による検出効率のマッピングを行ってありますので、そのデータを利用すれば補正できるはずです。

2010年2月16日火曜日

Run#30停止 (&その他雑記)



2/15からRun#30が開始される予定だったのですが、運転を目前にして「極低温水素系内、圧力変動吸収アキュムレータにおいて、真空リークが発覚」したためキャンセルとなってしまいました。
要するに、加速機は順調に動いているのですが、それを使って出てきた中性子を実験に使えるようにするための「モデレーター」と呼ばれる箇所の調子がよろしくない、ということみたいです。
2月も多くのユーザーの方に使ってもらうでしたし、非常に残念なニュースでした。

とはいえ、何もしないわけにはいきませんので、引き続きキャビンの設置作業を行っています。
今週、来週で電気配線やエアコンの設置を行い、3/2には火災報知器を取り付けて完成、となる予定になっています。
その後、制御系や装置アクセサリー等をキャビン内に移し、引っ越し完了となります。

また、サンプルチェンジャーのインストールをすると共に、それを用いた測定の自動化ができるように制御プログラムを書き換えました。
これで、少しは睡眠時間がとれるようになるはずです。
今は解析プログラムを開発中で、新しい検出器のデータ取り込みについて勉強中です。

2010年2月8日月曜日

工事中


年度末に向けて、再び工事を行ってます。
今回は、機器等を真空に引くための配管と居住スペースとなるプレハブ(キャビン)の設置作業です。
写真はビームライン内部に設置した真空配管で、下流から上流に向かってパイプが伸びている様子を示しています。
中性子は空気で減衰しますので(だいたい1mで90%)、途中を真空に引いてあげることでビーム強度のロスを防ぐことができます。
また、来年の夏にはT0チョッパーという約15kgの金属塊を1500rpmで回転させる機器を設置するのですが、これを回すためには空気抵抗を減らすために真空に引く必要がありますし、試料周りを真空に引いて実験したいという要望も寄せられています。
そのためにも、今回の真空配管は不可欠なものだったのですが、これまで敷設できていませんでした。
これでようやく対策がとれるようになりましたので、来年度にかけてさらなるケアを施していきたいと考えています。

ちなみに、キャビンの方は設置のための罫書きがだいたい終わり、10日以降に実際の設置作業を行っていく予定です。

2010年2月3日水曜日

Run#29終了

今回は装置の調整が3日間、ユーザーの実験が3日間×3グループというスケジュールでした。
新しい2次元検出器を使った初めての本格的な実験でしたが、
- 角度のスキャンが不要 (少々目的の角度とずれていても解析で何とかなる)。
- バックグラウンドも同時に測定することができる。
というメリットが得られたこともあり、非常に順調だったように思います。
また、今回新しく作ったシステムも(最初は若干のバグがあったものの)順調に動作しており、ユーザーの方からも「操作が楽になった」と好評な様子でした。

一方、
- 解析プログラムが不十分。
- 測定時間が短すぎて眠れない。
- 温度変化のためにいちいちシャッターを閉じなくてはならない。
といった問題点も浮き彫りになりました。
どれも、いずれは何らかの形で解決しようと考えていた問題ではありましたが、実際に苦労されているユーザーさんの様子を見ていると少々心苦しかったです。
最終的には、自分が実験する際にも苦労することになるわけですし、皆が快適に実験できるよう引き続き整備を続けていきたいと思います。

とりあえず、近々サンプルチェンジャーが導入される予定です。

2010年1月24日日曜日

run#29実験開始


夏に導入したチョッパー等の制御システム、先月に導入したシンチレーション検出器といった機器群を一つのPCで制御できるようにプログラムを書き換えました。今のところ手動操作のみのサポートですが、もう少しがんばれば角度の自動スキャンも行えるようになります。また、サンプルチェンジャーも導入予定で、そこまでできれば複数個の試料をほったらかしで自動測定できるようになります。今のところ、長くても2,3時間の測定時間なので夜中もつきっきりで実験しているという状況なのですが、これが実現化すれば夜はちゃんと眠れるユーザーに優しい装置へとまた一歩近づくことになります。

次は、2次元検出器のメリットを最大限に利用できるように解析プログラムを書き換える予定です。

2010年1月19日火曜日

J-PARC水平型中性子反射率計研究会

今日は以下のプログラムで研究会を行いました。準備の都合上、アナウンスがぎりぎりのタイミングだったのですが、20人を越える参加者があり予定時間を1時間以上もオーバーするほどの熱い議論を戦わせました。

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日時:2010年1月19日(火)15時~
場所:高エネルギー加速器研究機構4号館1階セミナーホール

<プログラム>
○15:00 瀬戸秀紀(KEK)
 「J-PARC/MLFの現状とS型課題」
○15:10 山田悟史(KEK)(代:瀬戸秀紀)
 「ARISA-IIの現状」
○15:30 御田村紘志(JST/ERATO)
 「BL‐16「試料水平型中性子反射率計」について」
○15:50 高橋浩之(東京大学)(代:藤原健)
 「高速・高分解能2次元MSGC」
○16:10 小林元康(九州大学,JST/ERATO)
 「中性子反射率を用いた固液界面における高分子電解質ブラシの膨潤挙動評価」
○16:30 横山英明(東京大学)
  「」
○16:50 鳥飼直也(三重大学)
  「ブロック共重合体薄膜への選択溶媒の浸透深さ」
○17:10 高原淳(九州大学)
  「まとめと今後の展開」