2009年12月15日火曜日

続・2次元検出器


2次元検出器のセットアップが完了しました。
まだ、特性評価の最中ですが、だいたい以下のようなスペックになります。
- 有感領域: 約100mmφ
- 分解能: 約1mm(中心位置)
- ピクセルサイズ: 約0.125mm
- 検出効率: 既存の3He検出器に対して17.6%@0.18nm,51.3%@0.9nm

図はCdの切れ端(幅:約2mm)を"BL16 ARISAII"と加工して検出器前面に貼り付けて測定したイメージング実験の結果です。
検出器の特性としてどうしても端はゆがんでしまいますが、ちゃんとCdの影が見えています。
今日からは、実際にこれを用いた反射率測定に挑戦してみる予定です。

2009年12月13日日曜日

2次元検出器


ついに2次元検出器が届きました。
待ちに待った多次元測定への第一歩です。
最も一般的な中性子の検出器は3Heを用いたタイプのもので、3Heが中性子を吸収した際に生じる電荷を検出することにより電気信号へと変換されます。
一方、今回導入したのはZnS/6LiFシンチレーター+位置検出型光電子増倍管で、シンチレーターという中性子を吸収することにより光を発する物質を用い、それを光検出器で観測することで中性子を検出します。
シンチレーターは3Heと比較して検出効率が低い・ガンマ線感度が高いといったデメリットがある一方、最大計数率や分解能が比較的高く、2次元検出器の中ではかなり安価に導入できるというメリットがあります。
特に、今までは位置分解能をもたない0次元の検出器を使用してきましたので、得られる情報が非常に限られてきましたが、検出器が2次元化すれば物質界面を多次元的に観測することが可能になります。

早速これを使って実験を行いたいところですが、まずは検出器自身の調整からです。
今回購入した検出器はKEKの佐藤さんが精力的に開発を進めていましたので、特に中性子を検出した際の信号処理回路についてヘルプをお願いしました。
そのおかげで、特に大きなトラブルもなく順調に動き始めています。
現在、色々な特性評価を行っている最中ですが、期待通りの性能が出ている模様です。
詳細については、またまとまってからアップする予定です。

2009年11月27日金曜日

run#27を終えて

run#27では丸々2週間を本格的な試料測定に充てました。
100kW運転によりビーム強度が格段に向上し、短時間で測定を終えられるようになりました。
また、バックグラウンド対策も進み、(まだちゃんとは検証していませんが)気体/固体界面の測定なら反射率で10^{-7}まで測定できそうな感触です。
スキャンも昔のARISAと比べれば格段に早く、簡単になりました。
実際に使っていただいたユーザーの方々にも、満足していただけたのではないかなと思っています。

ただし、人間の体力が測定に付いていきません。
感覚としては放射光実験にかなり近いです。
もう少し先でも大丈夫だと考えていた自動化ですが、優先順位をかなり上位まで挙げる必要がでてきました。
ただし、まだ自動化を行う上でハード的なトラブル(チョッパーの駆動系からノイズが発生している)が解決していないので、そちらをクリアしないことには先へ進めないという状況です。
一応、これを入れればしのげそう、という機器は発注済みですので、とりあえずはそれを試してみたいと思います。


なお、run#28(12月)は2次元検出器の設置を、run#29-31(1-3月)はユーザーへのビーム供用を予定しています。

2009年11月13日金曜日

run#27@100kW 初データ


ついに100kWになりました。
すごいです。

上の図は東大の横山グループの実験で得られた高分子と重水の界面からの反射率プロファイルで、膜厚(約1300Å)に起因する干渉と平滑な界面に起因する運動量遷移Qの-4乗に比例した反射率の減衰が見事に観測されています。
このデータは2Åから9Åの中性子を使用したもので、測定時間は0.30度、0.75度、2.0度でそれぞれ約5分、10分、100分です。
ARISAがKEKにあった頃だと、おそらく1日かけてもこの質のデータはとれていないと思います。
試料の位置調整を含めても2時間そこそこでデータがとれてしまいますし、まさに嬉しい悲鳴です。

ただ、同時に今まで気づかなかった細かい問題点もいくつか見えてきました。
大きな問題点がつぶれると、こういった細かいところが装置の性能に効いてきますので、今後色々と対策を施していきたいと思います。

2009年11月9日月曜日

100kW前夜


明日からrun#27が開始です。
予定では、20kWから100kWへと加速機出力が増大することになっています。
個人的には今でも結構強いと感じているので、これが5倍になるとどうなるんだろう?とちょっとどきどきです。

と、その前に、前回のrunで色々と測定はうまくいったのですが、バックグラウンドがまだ高いのが気になっていました。
まぁ、本来ケアしておかなくてはならない試料-検出器間のパスががらあきだったので、当然と言えば当然の結果です。
そこで大至急このパスを埋める筒を作ってもらい、今日無事に設置することができました。

ARISA-IIは着実にアップグレード中です。

2009年10月23日金曜日

調整完了


約2週間のrun#26でしたが、加速機の方も非常に調子が良く、順調に機器を調整することができました。
グラフはNi薄膜からの反射率プロファイルで、だいたい10^-5を切るぐらいまで測定することができています。
ただ、まだバックグラウンドが高いので、来月のrun#27までに手を打つ予定です。

それともう1つ、これまで反射率の絶対値へ変換する際のfactorを定量的に決定することができていませんでしたが、それを解決するためのテストも行いました。
このグラフは定量的に求めたfactorから反射率の絶対値へ変換したデータで、反射率が1から落ちている上に異なる角度がうまくつながっているように見えます。
また、これまでは角度を変える際に検出器のスキャンを行う必要があったのですが、目的の入射角へ半自動的にゴニオメーター・スリット・検出器を移動できるようにプログラムを変更しました。
反射率への変換プログラムも整備しましたし、ユーザーの方へ使っていただく準備が徐々に整ってきています。

来月はヘビーユーザーの方に実際に使っていただき、問題点を洗い出していく予定です。

2009年10月14日水曜日

run#26開始


夏期シャットダウンが終了し、J-PARCが再始動を始めました。
BL16では、この夏に入れた機器の調整を行っています。
特に、長波長成分をカットするために入れたディスクチョッパーの効果は特に顕著で、図のようにチョッパーをONにすると3Å以下の領域で乗っていたバックグラウンドが劇的に減少しました(データは入射角0.6度でのNi薄膜からの反射率)。

run#26は10/22までの日程で、残りの期間はさらなる機器調整や検出器関連のテストを行う予定です。

2009年9月18日金曜日

9月14日~18日の作業


今週は先週設置したチョッパーの動作確認を行うと共に、これまでに設置した機器の位置調整を行いました。
また、新たに中性子経路を制御するためのミラー架台、およびミラーの設置を行いました。
この機構については、上下駆動、角度調整機構のチェックを行い、全てのミラーで無事動作することを確認しました。
これで、今回予定した全ての作業が終了しましたので、前置き遮蔽体を元のように閉じました。
次回、この遮蔽を開くのは来年夏の予定です。

今後の予定ですが、あとはモーター駆動のプログラムを完成させ、動作確認をする作業が残っています。
これについては業者の方が9月中にプログラムを完成させ、10月にプログラムのテストを行う予定です。
その後、今の予定では10/12よりMLFにビームが供給されますので、今回設置した機器の調整を行います。

2009年9月10日木曜日

9月8日~10日の作業


今週は、新たに設置した鉄コリメーターの駆動機構を確認すると共に、ディスクチョッパーの設置を行いました。
これは遅い中性子によるバックグラウンドを落とすためのチョッパーで、25Hzで中性子パルスと同期させて運転します。
ただし、25Hzと言いますと1500rpmとそれなりに高速ですので、運転には注意が必要です。
今回は、ディスクチョッパーはテスト用の架台で25Hzで一晩以上の安定動作することが確認した後、実際の架台への取り付けを行いました。
来週はこのチョッパーの駆動をつめていくとともに、中性子経路を制御するためのミラー架台の設置を設置します。
その後、前置き遮蔽の復旧し、ビーム受け入れに備える予定です。

2009年9月7日月曜日

9月1~3日の作業


鉄コリメーターが納入されたので、先日くみ上げた遮蔽をいったんばらしてからコリメーターを挿入し、再度遮蔽を元の位置に設置しました。
写真の通り、上から吊るようなかたちになっていて、モーターで上下するようになっています。
この駆動機構に加え、今回はディスクチョッパー、水面測定用ミラーの制御にも多数モーターを使用しますので、そのためのケーブルを遮蔽体内へ入れ込む作業も行いました。
あとは残りの機器を設置、配線し、動作確認を行ってから遮蔽体を再び閉じる予定です。

2009年8月28日金曜日

遮蔽体追加 (8月27日)


前日に引き続き、機器設置を進めました。
この日に設置したのは余計な中性子を削るための鉄コリメーターとその周囲の遮蔽体です。
ただし、鉄コリメーターは後日に納入されるため、まずは遮蔽体が無事組み上がることを確認しました。
写真の通り、組み上げは無事成功しましたが、まだコリメーター本体の挿入と位置調整機構のチェックが残っています。

相変わらず実験ホールは蒸し暑く、ヘルメットの中は蒸れて蒸れて大変です。

T0チョッパー配管作業 (8月26日)


今週から、作業再開です。
この日はT0チョッパーという特に透過力の高いを止めるための機器の配管作業を行いました。
とはいっても、実際の装置が納入されるのは来年の予定なので、とりあえずこちらで準備したチューブが無事接続され、水がちゃんと流れるのを確認したところで配管作業は終了です。
その後は他の機器のために架台を設置したりしていました。

クーラーが効いていない+閉所での作業のため、業者さんは非常に蒸し暑い中がんばっていただきました。
ありがとうございます。

2009年8月11日火曜日

前置き遮蔽体の解体(8月10日)


現在、J-PARCは運転を停止しています。
BL16では、この運転停止期間を利用して追加のコンポーネントを設置する予定となっており、8/10はそのために前置き遮蔽体の解体を行いました。
8月後半はディスクチョッパー、T0チョッパー用の台座、水面測定用ミラーの設置を行う予定となっています。

2009年5月27日水曜日

RUN#24に向けて


いよいよ、今年度のマシンタイムが始まろうとしています。

今年のBL16は、ミラーを用いた光学系を挿入するための機器設置を予定していて、マシンタイム直前にミラーを据え付けるための架台を設置しました。また、夏にはビーム上流の遮蔽体内にもミラー用の架台、およびディスクチョッパーを設置する予定で、これによって水面等の自由界面測定が可能になる予定です。また、斜入射小角散乱用の集光ミラーについても鋭意開発中です。

2009年5月1日金曜日

ICNS2009



ちょっと更新に間が空きましたが、装置建設は着々と進行中です。

さて、その反射率計についてですが、5/3からアメリカで開催されるICNS2009にて建設状況、および今後の展望についてポスター発表を行います。具体的には
1.装置の現状
2.水面測定用の光学システム開発
3.斜入射小角散乱測定用の集光システム開発
4.ダイナミクス測定用のNSEオプションの検討
について発表を行う予定です。

2009年1月28日水曜日

MLF run#21


1/21よりMLFの運転が再開され、バックグラウンドの軽減に向けた遮蔽の増強や、新しい制御プログラムへの移行などを行っています。写真はB4Cゴムによる遮蔽で、スリットの脇から漏れていた中性子からのバックグラウンド除去のために新たに設置しました。まだまだ改善の余地はありますが、12月のデータと比較して1桁近くS/Nが向上しているものと思われます。

また、明日(1/29)からは韓国からコミッショニング作業のための研究者を受け入れる予定になっています。ここでは、特に石英基板と液体の界面構造測定に関するコミッショニングを行う予定で、MLFでは今のところ経験がない液体を使用した実験を実施することになります。それに備え、基板/液体界面測定に関する基礎的なデータの蓄積を行うと共に、放射線に関する事務的な手続きも進行中です。

2009年1月14日水曜日

制御プログラム更新中


現在、将来のアップグレードに対応するための拡張性を考慮して、制御プログラムの更新を行っています。また、より多くのユーザーに快適に使っていただくためにユーザーインターフェイスについても改良を試みています。特に、これからビーム強度が強くなると測定時間は短縮されていきますので、測定を自動化するモード等を積極的に実装していく予定です。