2010年3月2日火曜日

解析ソフト開発(データ変換)


引き続き、解析ソフトの開発中です。

前回は検出器に入ってくる画像の歪みを補正して正確な検出位置を求めることに成功しましたが、ARISA-IIのように飛行時間法(Time-of-Flight法)を用いて中性子の波長を分別する装置では、さらに中性子が発生してから検出器に入るまでの時間を測定する必要があります(中性子の波長は速度に依存するため、飛行時間から波長を逆算する)。
この飛行時間を測定するための回路は既に検出器システムに組み込んでありますので、あとは位置と飛行時間のデータを読み込んであげて運動量遷移Qに変換し、それに対する反射率の依存性計算すればOKです。

というわけで、まずは位置と飛行時間に対する中性子強度のマッピングができるようにしました。
図はリン脂質(細胞膜の主成分)をシリコン基板に積層した試料からの反射を測定したデータで、横軸が飛行時間(波長に比例)、縦軸が垂直方向(Y軸と定義)の位置に対応していて、中央のスポットがリン脂質の積層周期に対応するBraggピークです。
元々のビームは右上の挿入図のように水平方向(X軸と定義)に広がったビームですが、Y軸での位置が散乱角θに対応していますので、ここではY軸のみに着目します。
Y軸での位置によってピークとなる飛行時間が変化していますが、これはBraggの条件を満たす波長λがθに依存していることに起因しています(λ=2dsinθ: λは飛行時間に依存、θはYに依存、dは膜の積層周期なので定数)。

なお、試料が完全な鏡面であれば、中性子は狭いスポット(グラフで言うと赤色の領域に相当)のみに反射されるはずなのですが、この試料は基板に積層したリン脂質膜に熱揺らぎが生じているため反射ビームが広がっています(いわゆる非鏡面反射)。
逆に言うと、このビームの広がりは試料の面内構造を反映していますので、これを解析することによって、膜の熱揺らぎ等を定量的に解析することができます。

次のステップでは、反射率のQ依存性へと変換していきます。

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