2010年2月25日木曜日

解析ソフト開発(歪み補正)



今、解析ソフトの開発に取り組んでいます。

データファイルを読み出すコードをCで書いていたのですが、2次元データを読み込むところで検出器の個性である「画像歪み」が気になったのでそちらから片付けることにしました。

上の図はその画像歪みの補正過程で、元のデータ(左)は端の方で歪みが出ている上に、等間隔であるはずのスポットに粗密が現れています(直線性の悪化)。
このスポットサイズは実空間でどれだけの間隔であるかが分かっているので、そのデータを元に検出器座標(x,y)における実空間座標(X,Y)の等高線を最小自乗法で求めてやります(中央)。
すると各ピクセルが実空間でどの位置に対応しているかを計算することができるので、これを元にデータの焼き直しを行います(右)。
結果はごらんの通りで、もともと歪みが少なかった中心部分だけでなく、おおきく歪んでしまっていた端の部分までスポットが等間隔になるよう補正されています。
生データで見えている分解能の悪化によるスポットのにじみはどうしようもありませんが、少なくとも位置情報に関する信頼性は大幅に向上したと言えるでしょう。

なお、中心ほどスポットが強く見えるのは検出効率のムラに起因しています。
これについては、非干渉性散乱による検出効率のマッピングを行ってありますので、そのデータを利用すれば補正できるはずです。

2010年2月16日火曜日

Run#30停止 (&その他雑記)



2/15からRun#30が開始される予定だったのですが、運転を目前にして「極低温水素系内、圧力変動吸収アキュムレータにおいて、真空リークが発覚」したためキャンセルとなってしまいました。
要するに、加速機は順調に動いているのですが、それを使って出てきた中性子を実験に使えるようにするための「モデレーター」と呼ばれる箇所の調子がよろしくない、ということみたいです。
2月も多くのユーザーの方に使ってもらうでしたし、非常に残念なニュースでした。

とはいえ、何もしないわけにはいきませんので、引き続きキャビンの設置作業を行っています。
今週、来週で電気配線やエアコンの設置を行い、3/2には火災報知器を取り付けて完成、となる予定になっています。
その後、制御系や装置アクセサリー等をキャビン内に移し、引っ越し完了となります。

また、サンプルチェンジャーのインストールをすると共に、それを用いた測定の自動化ができるように制御プログラムを書き換えました。
これで、少しは睡眠時間がとれるようになるはずです。
今は解析プログラムを開発中で、新しい検出器のデータ取り込みについて勉強中です。

2010年2月8日月曜日

工事中


年度末に向けて、再び工事を行ってます。
今回は、機器等を真空に引くための配管と居住スペースとなるプレハブ(キャビン)の設置作業です。
写真はビームライン内部に設置した真空配管で、下流から上流に向かってパイプが伸びている様子を示しています。
中性子は空気で減衰しますので(だいたい1mで90%)、途中を真空に引いてあげることでビーム強度のロスを防ぐことができます。
また、来年の夏にはT0チョッパーという約15kgの金属塊を1500rpmで回転させる機器を設置するのですが、これを回すためには空気抵抗を減らすために真空に引く必要がありますし、試料周りを真空に引いて実験したいという要望も寄せられています。
そのためにも、今回の真空配管は不可欠なものだったのですが、これまで敷設できていませんでした。
これでようやく対策がとれるようになりましたので、来年度にかけてさらなるケアを施していきたいと考えています。

ちなみに、キャビンの方は設置のための罫書きがだいたい終わり、10日以降に実際の設置作業を行っていく予定です。

2010年2月3日水曜日

Run#29終了

今回は装置の調整が3日間、ユーザーの実験が3日間×3グループというスケジュールでした。
新しい2次元検出器を使った初めての本格的な実験でしたが、
- 角度のスキャンが不要 (少々目的の角度とずれていても解析で何とかなる)。
- バックグラウンドも同時に測定することができる。
というメリットが得られたこともあり、非常に順調だったように思います。
また、今回新しく作ったシステムも(最初は若干のバグがあったものの)順調に動作しており、ユーザーの方からも「操作が楽になった」と好評な様子でした。

一方、
- 解析プログラムが不十分。
- 測定時間が短すぎて眠れない。
- 温度変化のためにいちいちシャッターを閉じなくてはならない。
といった問題点も浮き彫りになりました。
どれも、いずれは何らかの形で解決しようと考えていた問題ではありましたが、実際に苦労されているユーザーさんの様子を見ていると少々心苦しかったです。
最終的には、自分が実験する際にも苦労することになるわけですし、皆が快適に実験できるよう引き続き整備を続けていきたいと思います。

とりあえず、近々サンプルチェンジャーが導入される予定です。